投稿日:2021年05月27日
住宅などの建物を建築する敷地には、「接道義務(せつどうぎむ)」が課せられていることをご存じですか?
これを満たすために必要となるのが「位置指定道路」です。
土地に対してはさまざまな法律による規制が密接に関係してくるので、住宅を建築するための土地を買うなら単に立地や値段だけで選んではいけません。
こちらではその一つである「位置指定道路」についてご紹介します。
位置指定道路とは、建築基準法上の道路として認められている私道の一種です。
道路には国や都道府県、市区町村などが所有・維持管理する「公道」と、個人や民間団体などが所有・維持管理する「私道」があります。
位置指定道路は私道の一種です。
位置指定道路は、建築基準法における「接道義務」の規定を満たすために生まれました。接道義務とは、建物を建てる土地は幅員(ふくいん:道路の幅)4m以上の道路に2m以上接していなければならないという規定です。救急車や消防車などの緊急車両がスムーズに入れて、安全が確保できるよう設けられています。
たとえば、不動産会社などが大きな土地を細かく分譲して販売する場合、奥の方にある敷地では、接道義務が果たせていないことがあります。
下図の場合、奥の「い」「え」が接道義務を果たせていません。
そこで設けられるのが「位置指定道路」です。
このような位置に位置指定道路を設ければ、区画内のどの土地も接道義務を果たすことができるようになり、すべての土地に建物が建てられるようになります。
この分譲地を宅地として開発する不動産会社等が、接道義務を果たせる場所に道路を設置し、特定行政庁(都道府県知事や市町村長等)に申請を出します。それが認められれば、その私道は「土地のこの部分が道路である」という道路位置指定を受け、「位置指定道路」となるわけです。
位置指定道路と似たような道路に、「公衆用道路」があります。公衆用道路は建築基準法上の道路ではなく、固定資産税放や不動産登記法上の道路を指します。
私道のうち「隅切り(すみきり:交差点などにおいて角地の土地の角を切り取って見通しを確保し、通行しやすくなるようにすること)」がしてあるなど、公衆のために利用されている道路は、公衆用道路の指定を受けられる可能性があります。
たとえば、近所の人が通り抜け道路として普段から通行している道路などです。位置指定道路のうち、不特定多数が普段から通行に使っている道路も対象となることがあります。
自治体に申請して「公衆用道路」と認められた道路には、固定資産税や都市計画税、不動産取得税がかかりません。ただしあくまでも私道の一種なので、所有者が変わった場合の相続税や贈与税など、税金の種類によっては課税対象となります。
私道の地目は一般的に「宅地」ですが、認定を受ければ登記簿謄本の地目が「公衆用道路」に書き換えとなります。各都道府県によって公衆用道路と認められるための要件が微妙に異なるため、担当部署に確認してみましょう。
実は位置指定を受けず私道のままであっても、そこに接した土地に家を建てられる場合もあります。幅員が4mに満たなくても、昔から人々が道路として使用してきた道は、建築基準法上の道路として多数認められてきました。
また建築基準法第42条の但し書きにより、建築基準法上の道路に接していなくても、敷地の周囲に広い空地があるなど交通上、安全上の支障がないと判断される場合は、建築が認められることもあります。
購入を検討している土地の接道が位置指定道路か同課は、所在地を管轄する役所で確認できます。建築家の窓口で「道路位置指定図」を閲覧しましょう。役所によっては道路位置指定図の写しを「指定道路調書証明書」として交付してくれます。
位置指定道路であるとわかったら、道路の所有者を確認しましょう。
位置指定道路の所有者は申請時点では不動産会社等であるケースが一般的ですが、分譲後の建売住宅地などでは、その道路に接する土地の所有者の共有名義になっているケースが一般的です。
このほかにも次のようなケースがあります。
・地主の個人名義になっている
・いずれか一軒の個人名義になっている
・不動産会社等が所有し続けている
・その道路に面した土地の所有者が分筆した道路を所有している など
分筆した道路をそれぞれが所有しているケース
問題となるのは、分筆した土地をそれぞれが所有しているケースです。たとえば「え」に住んでいる人は「ア」「イ」「ウ」「エ」のいずれも使わなければ生活できません。しかし、それらの道路にはそれぞれ所有者がいるので、通行を認められない可能性もあります。
過去の裁判では所有者以外に「通行権があるとは断定できない」という判例も出ています。土地の所有者から通行料を請求されてもおかしくないということです。そのため、分筆持ち合いであれば私道所有者それぞれとの関係を良好に保つことが大切になります。
住宅の建築時には、屋外給排水工事などで道路を掘削したり、私道に工事車両を停めたりする可能性もあります。その際通過する道路の所有者がその工事に納得しなければ、妨害を受ける可能性も否定できません。
そのため、購入の前に仲介会社と売主を通して、私道の所有者が通行や掘削に関して承諾する旨の承諾書を取ってもらうことをおすすめします。承諾書が取れない場合は、トラブルに発展する可能性があることを知っておきましょう。
位置指定道路の所有者は、一般的にその土地を開発した不動産会社などです。道路位置指定を受けるための具体的な方法は、対象となる道路を整備して特定行政庁(都道府県知事や市町村長など)に申請を提出することです。
対象となる道路は、次のように整備しなければなりません。
・幅員が4m以上あること
・側溝を設けること
・路面を舗装すること など
税金で維持管理される公道と違い、私道なので所有者の負担で整備して申請します。共有名義の場合、全員の合意がないと申請できません。
たとえば、その道路が公道になってしまえば、固定資産税や都市計画税も課税されませんし維持管理費もかからなくなります。実際に大規模開発を行った分譲宅地などでは、分譲地内の道路が位置指定道路ではなく公道となることもあります。そうなれば所有者の権利関係も発生しませんので、法律的な面でも安心です。
ただ、公道にするには耐久性などでかなり厳しい基準が設けられており、申請を出したからといって簡単に公道にはなりません。
位置指定道路の固定資産税や都市計画税は、所有者が負担します。個人や団体の場合はその所有者が単独で、共有名義になっている場合は持分割合に応じて支払うことになります。
対象となる道路が通り抜け道路で、公衆用道路の認定を受けている場合は、固定資産税や都市計画税がかかりません。認定を受けていれば登記簿の地目が「位置指定道路」となっています。
そうではなく袋小路になっている場合などで特定の人しか利用しないケースでは、土地本来の評価額に対して30%相当額で評価額を出し、それをもとに固定資産税や都市計画税が課税されます。
住宅建築用の敷地を購入する場合は、その土地の建築に関わるさまざまな法規制などを確認する必要があります。その土地が位置指定道路付きであるかどうかも、事前に確認しておきましょう。
位置指定道路付きの土地であった場合、次のような点に注意して購入手続きを進めていきます。
購入予定地が位置指定道路付きの土地である場合、必ず購入する前に私道部分の所有者や所有形態を確認しましょう。
私道部分の名義が接道地の所有者全員による共有名義であれば、あまり問題ありません。
ただし、地主などが個人で所有していたり、分筆してそれぞれの所有分を持ち合っていたりする場合は注意が必要です。特に、古い位置指定道路があるエリアで、それを生かして建売住宅を分譲する場合などでは、地主が個人で所有しているケースが多くなります。
ご紹介したように位置指定道路は私道なので、それぞれ所有者が存在します。私道の所有者にはほかの人の道路の使用や通行を認めないという権利があり、分筆してそれぞれが私道部分を持ち合っている場合、いざ家を建てようとしたときに所有者の許可が得られず、工事を妨害されてしまう可能性があります。また普段の通行に対して、通行料を要求される可能性もあるためです。
その場合は購入する前に、仲介業者と売主を介して私道の所有者から、私道の通行や掘削工事に関する承諾書をもらっておきましょう。口約束では反故にされる可能性がありますが、書面で承諾を得ておくと安心です。
仲介業者の確認不足で私道部分を買わずに位置指定道路付きの土地だけを購入してしまった場合、元の所有者から使用料を請求されたり、高い値段で購入するよう交渉されたりする可能性もあります。特に飛び地になっている場合(土地の目の前の道路ではなく少し離れた位置の道路を所有している)などは、道路部分が忘れられやすいので注意してください。
宅地に面する道路には、水道管や下水管などが埋設されており、新築時には屋外給排水工事で新しい住宅の水道管等と接続します。この道路に埋まっている管が「私設菅」なのか「公設管」なのかという点も、購入前に確認しておきましょう。
老朽化した配管は補修したり入れ替えたりといった維持管理をしなければなりません。公設管の場合は行政が維持管理を行ってくれるので、それらの費用を負担する必要が亡くなります。
「位置指定道路」という言葉はあまり聞く機会がありませんが、このように知らないとトラブルのもとになることもある規定です。住宅用地を購入するなら、契約前に必ず位置指定道路付きの土地かどうか確認しておきましょう。
ご閲覧ありがとうございます。
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