投稿日:2021年04月27日
土地や建物などの不動産を取得すると、「不動産取得税」が課せられます。物件購入後に一度だけ課せられる税金ですが、税額が意外と高く驚かれる方も多いようです。
しかし、不動産取得税には時限的な軽減措置があり、条件を満たす物件を購入すれば大幅な節税もできます。ここでは、軽減措置を受けるための条件や税額の計算方法、軽減措置後の税額シミュレーションなど、不動産取得税に関して知っておきたい情報をまとめました。
不動産取得税とは、土地や建物、マンションなどを購入したときに一度だけ課せられる地方税です。
地方税ですから、納税先は都道府県の税事務所になります。新居に引っ越してからしばらくすると納税通知書が届きますので、忘れないように納めましょう。
また、都道府県ごとに税額の計算方法や納税期限などが若干異なることがあります。
詳しく知りたい方は、新居のある都道府県のホームページなどで確認されることをおすすめします。
なお、相続で取得した不動産物件に関しては購入したわけではないため、不動産取得税を支払う必要はありません。その代わり、相続税が課せられる場合があります。
不動産取得税の支払い時期は、自治体や取得した不動産の申請方法などによって異なります。
栃木県を例に挙げると、土地や建物を取得して法務局で所有権移転登記を行った方の場合は、登記手続が完了して4~6ヵ月後に納税通知書が送られてきます。
また、建物を新築や増築した方だと家屋評価を行った機関によって異なり、県税事務所が家屋評価を行ったら評価終了から1~3ヵ月後、市町が行ったら翌年の7月頃に納税通知書が送られてきます。
いずれの場合も、納税通知書に記載された納期限までに納めましょう。
気になる税額の計算方法について、説明しましょう。
不動産取得税の税額は、「課税標準額×税率」で求められます。
課税標準額とは、一般的に固定資産税評価額が用いられます。物件の購入額とは異なり、通常は物件の購入額のおよそ5~7割くらいが目安です。
また、不動産取得税の税率は原則4%となっています。
たとえば、土地と建物をあわせて4,000万円の新築戸建を購入した場合、固定資産税評価額は2,000~2,800万くらい。
税率4%で、不動産取得税は80~112万円くらいになります。新居に引っ越して何かと物入りなことが多いなかで、多額の不動産取得税の納付通知書が届き、面食らう方も少なくありません。
ただし、2024年(令和6年)3月31日までに不動産を取得された方には、この税額が大きく軽減される特例が適用されます。具体的な内容は、次の項目で紹介しましょう。
2024年(令和6年)3月31日までに一定の条件を満たす不動産を取得された方は、不動産取得税を減らせる軽減措置が適用されます。
まず、軽減措置が受けられる建物は、以下3つの要件を満たす必要があります。
(1)延床面積が50m2以上240㎡以下であること
(2)居住用として使う物件であること(セカンドハウスもOK)
(3)新耐震基準に適合していること(1982年1月1日以降に建築された物件など)
対象物件は居住することが目的の住宅のみで、事業用の建物などは軽減措置の適用外です。
次に、軽減される内容ですが、以下の3点がポイントになります。
(1)税率は3%になる
(2)建物の課税標準額から一定額を控除できる
(3)土地の課税標準額は2分の1の額とし、さらに一定額を控除できる
不動産取得税は、建物と土地、それぞれに課せられるものですが、軽減措置では税額の求め方が異なってきます。
また、新築と中古でも控除額が異なるなどケースが多岐にわたるため、ここでは「新築の建物」「中古の建物」「土地」「マンション」の4つにわけて、軽減措置のポイントを説明します。
新築の建物だと、税率が3%、課税標準額から1,200万円を控除できます。建物の購入金額が1,200万円以下の物件なら、不動産取得税は0円です。
また、長期優良住宅に認定された新築住宅だと、課税標準額から差し引かれる控除額は1,300万円になります。
中古物件の場合、税率は3%ですが、課税標準額から差し引かれる控除額は築年数に応じて異なります。
具体的には、1997年4月1日以降に建てられた住宅は新築と同じく1,200万円の控除額ですが、1989年4月1日から1997年3月31日までなら1,000万円、1985年7月1日から1989年3月31日までなら450万円と、築年数の古い建物ほど控除額が下がる仕組みになっています。
また、中古住宅では「新耐震基準に適合していること」という建物の要件に注意が必要です。1981年以前に建てられた家で不動産取得税の軽減措置を受けるには、耐震診断を行い新耐震基準に適合していることを証明する必要があります。
しかも、耐震診断などの調査は建物を取得した日の2年前までに終了している物件に限られますから、取得される方は新耐震基準に適合しているかどうかを不動産会社に確認しましょう。
土地の軽減措置は、少し複雑です。
まず、軽減措置の対象となる土地は、「建物と同じ所有者であること」「新築住宅は土地を取得してから3年以内に建てること」など、いくつかの条件を満たす必要があります。
これらの条件を満たす前提で、軽減される内容を紹介します。
土地も、税率が3%に引き下げられる点は建物と同じです。建物と違うのは以下の2点があります。
(1)課税標準額は固定資産税評価額の2分の1になる
(2)不動産取得税の税額から、以下abのいずれか多い額を控除できる
a)4万5,000円
b)(土地1m2あたりの固定資産税評価額×1/2)×(延床面積の2倍)×(3%)
※延床面積は200m2が上限
少々複雑ですから、この後に紹介するシミュレーションで具体的な計算例を挙げながら詳しく説明しましょう。
マンションも、上記で紹介した戸建住宅と同様の基準や要件で、軽減措置の内容が決まります。
新築なら、延床面積が50m2以上240m2以下などの基準を満たせば、税率は3%、控除額は1,200万円です。
注意点としては、共有部の面積も持ち分に応じて加算されること。専有面積だけではないことを把握しておきましょう。
具体的に、軽減措置によってどれくらい不動産取得税が安くなるのかを、シミュレーションしてみます。
ここでは、土地と建物を併せて4,000万円の新築一戸建てを購入するケースで考えました。課税標準額は、市場価格の約7割として2,700万円、内訳および土地や延床の面積は以下の通りで仮定します。
・土地:課税標準額:1,200万円/面積:120m2
・建物:課税標準額:1,500万円/延床面積:180m2
なお、土地と建物の所有者は同じ、購入するタイミングも同じとします。税率は3%で、軽減措置を受ける場合と受けない場合を比較してみましょう。
軽減措置を受けない場合、土地は課税標準額の2分の1の額に、建物は課税標準額に3%かけた額になります。
・土地:1,200万円×1/2×3%=18万円
・建物:1,500万円×3%=45万円
合計の不動産取得税額は、63万円です。
次に、軽減措置を受ける場合ですが、建物は新築ですから評価額から1,200万円を控除して求めると、税額は9万円になります。
・建物:(1,500万円-1,200万円)×3%=9万円
土地に関しては、下記abのうち多い方を税額(18万円)から控除して求めます。
a)4万5,000円
b)(土地1m2あたりの固定資産税評価額×1/2)×(住宅の床面積の2倍)×3%
b)に関しては以下の通りです。
・土地1m2あたりの固定資産税評価額×1/2 → 1,200万円÷180m2×1/2=3万3,000円
(百円単位以下切り捨て)
・住宅の床面積の2倍) → 120m2×2=240m2
よって、b)の公式に当てはめると
3万3,000円×240m2×3%=23万7,600円
a)よりb)のほうが多いので、土地の税額から237,600円を控除します。
18万円-23万7,600円=-5万7,600円
控除額の方が税額より大きいため、税額は0円になります。
よって、不動産取得税の税額は建物のみの9万円です。軽減措置を受けなければ63万円ですから、大幅に軽くなることがわかります。
なお、計算方法は都道府県によって若干異なります。詳しくは管轄の税務担当の部署に確認しましょう。
不動産取得税の軽減措置を受けるには、管轄の税事務所にあらかじめ申告をしておく必要があります。
申告期限は、新居に入居してから原則60日以内。ただし、都道府県によって異なりますから管轄の税事務所で確認しておきましょう。
必要書類には、軽減措置の申告書のほか、売買契約書や登記事項証明書、検査済証などがあります。これも都道府県によって異なります。
なお、実際には登記申請をした際に税事務所にも情報が伝わっているため、申請をしなくても軽減措置を行ってくれるところもあります。心配な方は、管轄の税事務所に確認しましょう。
もしも、軽減措置の申告を忘れた場合、軽減を受けない税額の納税通知書が送られてきます。
その際は速やかに、管轄の税事務所に問い合わせをしましょう。申告期限後であっても、申告を受け付けてくれる自治体もあります。
とはいえ、必ず受け付けてくれるわけではありませんので、新居に入居したらできるだけ早く申告されることをおすすめします。
2024年(令和6年)3月31日までに一定の条件を満たす不動産を取得した方には、不動産取得税の税率が4%から3%に引き下げられます。
これだけでも税額は安くなりますが、加えて管轄の税事務所に申告することで、さらに軽減措置が受けられ、場合によっては税額が0円、つまり不動産取得税を収めなくても良いケースもあります。
この軽減措置は、不動産購入にかかる負担を少しでも抑えるために設けられた時限的な制度です。マイホームを検討されている方は、この機会に購入されてみてはいかがでしょうか。
ご閲覧ありがとうございます。
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