投稿日:2021年11月30日
不動産を購入したり贈与されたりした場合、不動産取得税という税金を納める必要があります。
ただし、一定の条件を満たす建物や土地に関しては、不動産取得税の軽減措置を利用可能です。軽減措置を利用できれば、税の負担は大幅に軽くなります。
税の話は知識を持っているかどうかで納税額が大きく変わってきます。
ここでは不動産取得税の計算式や軽減措置を受ける方法等を解説していきます。
不動産取得税は、
・売買
・贈与
・交換
によって土地や建物を自分のものにしたとき、都道府県に納める税金のことです。
不動産を入手した時期や不動産の要件によって軽減措置が用意されており、都道府県の管轄なのでお住まいの地域によっては税率等が違う場合もあります。
基本的には、不動産を手に入れた後都道府県税事務所に不動産を取得したことを報告し、数ヵ月経つと新居に納税通知が届くため、その通知書を使って納税するという流れです。
なお、不動産取得税の納税額は、課税標準額×税率という計算式で求められます。
不動産を買ったときの金額がそのまま適用されるわけではなく、固定資産税評価額と呼ばれる基準を利用するのが特徴です。
また、相続や事業の合併に伴う不動産の接収で得た不動産に関しては、不動産取得税がかからないというルールになっています。
不動産会社を通じた場合も、個人から購入した場合も、不動産を購入すれば不動産取得税の課税対象です。
マイホーム目的の所有であれ、不動産投資物件の購入であれ、お金を払って手に入れた不動産に対しては税金を納めることになります。
なお、親族間などで相場より明らかに安く不動産を取引すると、差額分が贈与という扱いになり、別途贈与税がかかってしまうので注意しましょう。
贈与とは、第三者からお金や資産をもらうことです。
親や祖父母から不動産をもらったり、不自然な値引きを受けて不動産売買をしたりすると贈与によって不動産を手に入れたことになり、不動産取得税を支払う必要があります。
贈与の場合でも売買の場合でも、実質的な所有権が移ったら課税されるので、「不動産取得税を払いたくないから不動産の名義を元の所有者のままにしておく」といった手段は取れません。
不動産と不動産を交換した場合も、不動産取得税がかかります。
交換する不動産に関しては、土地でも建物でもその両方でも違いはありません。
土地を統合したいので隣地の所有者と土地を交換する、地主と借地人の間で底地と借地権を交換するといった場面で使われます。
なお、交換する土地の価格に差があるため、差額を現金等で支払っている場合、お金を受け取った側に譲渡所得税が発生するため注意が必要です。
不動産取得税の税率は、土地・建物共に原則として4%です。
ただし、軽減措置が用意されているため、実質的な税率は3%に下がっています。
軽減措置の適用は適宜更新されているので、不動産を手に入れたら都道府県のホームページ等で具体的な税率を調べましょう。
また、宅地に関しては評価額に1/2をかけた上で税率計算するため、軽減措置を受けられれば大幅な納税額の減額が可能です。
住宅を新築したり建て替えたりした場合、建物の評価額から1,200万円を控除できます。ただし、いくつか条件を全て満たしておく必要があるため、注意しましょう。
・1997年4月1日以降に建設された物件である
・共同住宅の賃貸は床面積が40平方メートル~240平方メートル以下
・共同住宅の分譲と一戸建ては床面積が50平方メートル~240平方メートル以下
長期優良住宅といって、国が定めた住宅性能を上回る住まいを新築している場合、別途100万円控除を積み増し可能です。
新築物件の場合は、最大で1,300万円の控除が利用できることになります。
また、家の新築に合わせて手に入れた土地に対しても、軽減措置を適用可能。
控除の金額は、以下の計算を行い、金額の高い方です。
建物の控除と違って、土地の控除は「税額」から差し引きする点を覚えておきましょう。
・4万5,000円
・土地の1平方メートルあたり単価×1/2×住まいの床面積の2倍(最大200平方メートル)×不動産取得税率
なお、土地の軽減措置に関しては、土地自体の取得期限も気にする必要があります。
先に土地を買って家を建てる場合、土地を買ってから3年以内の新築が必須です。
逆に、借地や親の土地など、自分のものではない土地に家を建てた場合は、新築してから1年以内に土地を自分のものにする必要があります。
取得期限に間に合わなかった場合、建物に対する不動産取得税の軽減は受けられますが、土地に対する不動産取得税の軽減が受けられなくなるため、家を土地はセットで手に入れましょう。
実は、中古住宅を入手した場合も、不動産取得税の軽減措置を利用可能です。
中古住宅の場合は、以下のような条件をクリアする必要があります。
・住居として使うこと
・延床面積が50平方メートル~240平方メートル以下
・1982年以降に建てられた・または新耐震基準をクリアしている
上記全ての条件を満たしている場合、建物の評価額から最大1,200万円控除可能です。
控除額は築年数によって変動する仕組みになっており、基本的には築年数の浅い物件ほど控除額が高くなるよう調整されています。1,200万円の控除を受けられるのは、 1997年の4月1日以降に建築された中古住宅です。
なお、1982年の建築基準法改正前に建てられた住まい、つまり新耐震基準を満たしていない住宅に関しても、手に入れてから半年以内に耐震改修工事を行い、耐震性の診断を受ければ特例として控除を受けられます。
中古住宅の購入時に土地を取得すると、
・4万5,000円
・土地の1平方メートルあたり単価×1/2×住まいの床面積の2倍(最大200平方メートル)×不動産取得税率
を比較してより高額な方を控除可能です。
土地に関しては新築・中古共に同じ条件で軽減措置を利用できます。
不動産取得税の計算方法は、「不動産の評価額×税率」と非常にシンプルです。
この評価額に関しては、基本的に固定資産税評価額と呼ばれる金額を当てはめます。
固定資産税評価額とは、不動産に対して適切な課税をするために各都道府県が調査・決定している不動産価格のことで、不動産取得税以外に固定資産税等の税額計算をするときなどにも利用される基準です。
新しく不動産が登記されたとき、自治体の職員が不動産を1軒1軒訪問して実地調査を行い、適切な金額を割り出しています。
固定資産税評価額は毎年更新されますが、短期間で大きく変動するものではないため、中古物件なら前オーナーに固定資産税評価額を教えてもらうと良いでしょう。
新築物件の場合、固定資産税評価額は建物がおおよそ市場価格の5割、土地なら7割ほどとなるため、ざっくり計算しておくと必要な納税額を事前に割り出せます。
ただ、不動産取得税は県税なので、正確な固定資産税評価額や税率は最寄りの役所などで調べておきましょう。
ここで、実際に新築住宅・中古住宅を購入した場合の納税額を計算していきます。
想定する条件は以下の通りです。
・広さ70平方メートルの新築一戸建てを1,900万円で購入
・広さ150平方メートルの土地を2,000万円で購入
建物と土地の固定資産税評価額は、購入額のおおよそ5~7割になるため、建物の評価額は950万円、土地の固定資産税評価額は1,400万円と考えましょう。
軽減措置を利用しない場合の税額は、
・建物の不動産取得税額=950万円×3%=28.5万円
・土地の不動産取得税額=1,400万円×1/2×3%=21万円
合計49.5万円です。
ここで、建物・土地の両方に軽減措置を適用します。
長期優良住宅ではない新築住宅は1,200万円の控除を利用でき、土地に関しては下の計算式で控除額を求めます。
・土地1平方メートルあたり単価×1/2×住まいの床面積の2倍(最大200平方メートル)×不動産取得税率=13.3万円×1/2×70×2×3%=27.9万円
・建物の不動産取得税額=(950万円-1,200万円)×3%=0円
・土地の不動産取得税額=1,400万円×1/2×3%-27.9万円=0円
軽減措置を利用することで、建物・土地の両方とも納税額をゼロにできました。
不動産取得税の軽減措置を受けるためには、一定期間以内に不動産のある都道府県の税事務所に申告をする必要があります。
この「一定の期間」は都道府県によって長さが違い、住んでいる場所によっては10日以内と比較的期間が短い場合もあるため注意が必要です。
また、税事務所に提出する「不動産取得申告書」と一緒に軽減措置の申請も行います。
都道府県によって、また手に入れた不動産の種類によって売買契約書を始めとした書類の準備が必要だったり、不動産取得申告書だけで申告と軽減措置の申請を両方出せたりする場合もあるので、わからない場合は最寄りの役所や税事務所に問い合わせましょう。
期間内に不動産取得申告書を提出すると、おおよそ4ヵ月から半年ほど後に自宅へ不動産取得税の納税通知書が送られてきます。
後は、各種コンビニや金融機関に納税通知書を持っていき、支払いをすませたら納税手続き完了です。
なお、軽減措置の特例を受け忘れた場合、不動産の取得から5年以内なら過去に遡って軽減措置の申請を提出できます。
もし不動産取得税を多く納めてしまっても、手続きすれば還付金として戻ってくるので安心です。
不動産を自分のものにしたときにかかる不動産取得税額は、固定資産税評価額を調べ、軽減措置を適用して税率をかければ簡単に求められます。
ただし、不動産取得税の軽減措置を受けるためには、不動産の建築年数や面積といったいくつかの条件をクリアする必要があので、要件に当てはまるかどうかを必ずチェックしましょう。
また、県税である不動産取得税は、自治体によって申請の仕方やルールが違います。
不動産を手に入れるときは、事前に県税事務所や役所に問い合わせておくことも大切です。
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